REGISTRATORS INTERVIEW
"disk union free paper EXTRA issue 51"



70'Sスタイルのハードバンドという初期のパブリックイメージをあっさりと脱ぎ捨て、NEW WAVE的な展開を見せた2ND、そして近未来を予感させつつ明らかに現代におけるPUNKを提示した3RD。
1年8ヶ月のインターバルをおいてリリースされる今作は、大方の予想をまたもや覆す、余りにも生々しいサウンドとなった。凶器的な音の積み重ねとバランス感覚は、進歩する事を止めた日本のインディーズシーンにおいては、異端視されかねない作品となった。
それなのに収録された楽曲は恐ろしいまでにPOPであり、美しいメロディなのだ。
ここにまで辿り着いてしまったバンド、REGISTRATORSが今の割と素直な思いを語った。

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--ズバリ今回”MID(中域)サウンド”に突出した理由からお訊きします。

Otsuki(Vo/G):まぁ好きな帯域なんだろうね。優しい音だし、耳に痛くないし、何回でも聴ける音じゃない?

--まぁそうですね(笑)。

otuki:でもね、実際はねドラムの500〜800Hzの帯域は抜いてるんだよね。後でギターや歌が入って来るであろう部分はスペース空けたんだよね。で、空け放しだと、いわゆるガレージサウンドになってしまうから、今度はその空いた部分に高いところと低いところを「ギュッ」と寄せてるんだよね。そうする事によって優しい、まろやかな中域感を出したかった。

--その音って頭の中で鳴ってる音ですよね?

otuki:そうだね。

--その鳴ってる音や過去自分が聴いて好きなサウンドって具体的にどの帯域の周波数が出ていて、どの周波数がカットされてるかって解かんないですよね?

otuki:そりゃ解かんないよ(笑)。

--でも、その音を作ったじゃないですか?

otuki:(笑)結果なんだよね。確かに今までの作品と比べて、終わってからも聴く量は今作が多いし、やっぱり優しいからさ、聴いてても疲れないんだよね。でも、自分が好きで聴いている70年代の中後期の音でも、もっとHI-FIな音ってあるでしょ?そう思うと、今回で原石は作ったけれど、今度はその原石をどうやって輪郭をつけるか...その為に削り出していく作業のバランス感覚の重要性が問われる訳だから、まだまだ大変だよ(笑)。

--輪郭を形作っていくとするなら楽曲自体もいわゆるPUNKナンバーって減っていきます?

otuki :それはそうなんだけど、PUNKナンバーを作らないという事でもないよね。最近は出来た曲を演ろうかなと思って(笑)。

--そうすると、アルバムサイズで見た時にいわゆる"統一感”って出し難くないですか?

otuki:まぁそうだね。出難いだろうね。でも、統一感なんて後からくっ付いてくる部分でもあるよね。結局、同時期に録るんだから、ない事もないんだよね。でも今はその部分も考えずに曲を作って行く事に楽しさを感じてるかなぁ。曲については、本当にもっと自由に考えていて、凄く音が詰った”ALL OF SOUND”みたいなのがあってもいいし、スカスカで隙間の多いものが同一のアルバムにあってもいいと思うんだよね。その曲に合っていれさえすればね。今回の録音で新たな選択肢が増えた訳だし、やり方は色々あるよね。

--曲を作っている時点で大槻さんの頭の中にはそのサウンドの質感ってすでにあるんですか?

otuki:うーん、大概は見えてるかなぁ。

--今回でいうと「RUNNING WITH THE FIRE」なんかもそうですか?あの質感とか凄く好きなんですが、あのミックスに至るまでに勇気要りませんでしたか?

otuki:(笑)勇気出したねぇ。最初はもっと凄かった(笑)。最終的にはキレイにまとめようとは思わなくなって...整理しちゃうとツマらなくなるかなと思ってさ。

--曲自体も今までにないタイプですよね?言葉良くないですけど、あの曲を演る気恥ずかしさみたいなものが余り気にならなくなってるかな...とか思って(笑)。

otuki:(笑)それはね、多分各曲の相関関係にあるんじゃないの?1曲目があるから、6曲目があるからあの曲が出来るんじゃないかな。新しい曲ではあると思うよね、両方とも。それに4曲目、5曲目みたいな定番で大得意のヤツがあってさ。だから「RUNNING WITH THE FIRE」みたいな曲が割とラフに出来るスペースがあって、ここまでやってもいいんじゃないかなと思ったんだろうね。

--あの曲だけじゃないんですけど、恐らくね、世間の大方の予想って「VELOCITY」の路線を押し進めた未来感覚的なものを予想してたと思うんですよ。

otuki:そうだろうね(笑)

--って事は当然、その期待というか予想されてるのを自分でも感じてましたよね(笑)?

otuki:ガッチリ感じてたよ。でもね、敢て外してやろうとも思ってなかった。恐らくメンバー自身未だに釈然としてないかもしれない(笑)。

--(笑)。

otuki:多分ね、みんなが思ってたのはより近代的というか現代的っていうのかな...都市感みたいなものを増幅させていて、複雑化したものを予想してたんだと思うのね。でも本当に敢て外したんじゃなくって、何処へも行きたくなかったんだよね。かといって未来感みたいなサウンドは「VELOCITY」で完成したかっていうとそうではなくって逆に2NDの「BOYS FROM NOWHERE」を作った時にある程度完成しちゃったんだよね。今はより土着的な方向に魅了があるかな。

--その理由を敢えて言うと?

otuki:3RDをやってて思ったんだけど、よりテクノロジーとか未来的な難解そうなスタジオワークの作品って作れるなって思ったんだよね。作り物としての作品は作れるよ。そう思ったからさ。

--そういった作業には興味がないですか?言ってみれば究極のスタジオワーク作品みたいなものは?

otuki:もちろん興味あるしやってみたい部分もあるんだけれども、何ヶ月もスタジオ篭ってさ、あれこれやってればソレっぽいものが出来ると思うんだけど、結局、非日常の中での産物だと思うんだよね。それよりはもっと日常の中での作業にしたいんだよね。結果、同じ産物であっても日常の中から産まれるものが欲しいし。後は、そういった一見難解なスタジオ作品の方が偉いみたいな風潮があるじゃない?でも違うと思うんだ。3分間の中でより完璧なポップソングを作る方が絶対偉いよね。そこに改めて気付いた。

--さっきも言ってましたが、新たな方法を今作で取った事によってより選択肢が増えた部分と今までの経験値があれば、この先の変化も読めない位に広がっていきませんか?

otuki:そうだね。今までの変化は環境やシチュエーションによる事での変化だったけれども、今回からは俺は原則を持ったんだよね。自分の機材で自分のフィールドで作っていける訳だから。これからの変化は蓄積されていくんだよね。凄く楽しみ。

--やはり、自分で機材を持った事って大きいですか?

otuki:そりゃそうでしょ。だってさ、街の録音スタジオで録るにしたって、結局はそのスタジオのオーナーであるとか、エンジニアが選んで使い易いセッティングをしてるでしょ?結線だってそうだよね?その中で自分の出したい音になるかっていったら「なるわけない」よ。しかも限られた時間の中でなんて絶対無理だよ。

--結局バンド側がエンジニアに歩み寄ってるんですよね。エンジニアというよりはプロデュ−サ−に実質近い...。

otuki:そう、そう。ただ、今回の機材をいくら自分で選んだり、結線したりしてもやっぱりどこかで限界はあると思うのね。そこでどうするかっていったら、その機材を持ち出して他のスタジオの機材と組みあわせていけるよね?その逆に外のスタジオで現代のハイクオリティ(と呼ばれている)なもので録った素材を、自宅の機材で加工する事も可能だし。やっぱり、それが出来るのは原則を持ったからだと思うよ。

--少し話しは逸れますけど、今のいわゆる主流や流行の音ではないのは確かじゃないですか?その辺りについて少しお訊きしたいんですけど...。

otuki:もうとにかく今のサウンドが凄く嫌いなんだよね(笑)。って事は他にも同じ様に今のサウンドに嫌悪している人達がいるはずでしょ?少数かもしれないけれども。だからね、そういうサウンドであるとか、見た目のキャッチ−さという部分にはいたくない。みんなバンドもレーベルもそういう音楽以外の要素に一生懸命でしょ?もうそれが続くと音楽が面白くなくなるよね。ただ、反面において売るという部分を考えると確かに現代の音っていうのもキチンと認識しないとダメだなとも思うよ。

--例えば、僕らの年代なら体験としてまだ70年代の音楽やサウンドって耳のどこかに記憶として刷り込まれてるじゃないですか?でも例えばHi-STANDARDやGREEN DAYとかいわゆる90年代の音楽からPUNKを聴き始めた若い世代にこの音ってどう届くのかな...と思って。

otuki:(笑)。辛いだろうねぇ。中にはいいと思う人もいてくれるだろうけど1/1000くらいじゃない(笑)?ただ、一つ言いたいのは”このCDはボリュームを上げて聴いて欲しい”ってこと。これは。本当の意味での「PLAY LOUD!」なんだよ、決してキャッチコピーではなくてね。コンポについてるイコライザーを全部フラットにして聴いてもらいたいなぁ。そうすれば、分かる様に作ってあるんだよ。隠れていた音が「グワッ」と聴こえてくるはずなんだ。言ってしまうと照れ屋なんだよね(笑)。だから全面展開できないんだよ(笑)。それを分ってくれる人がいるのは間違いないし...少数だけど。それに決して一気に消費される音楽ではないと思っているから、2〜3年後にそういう人達を増やしていけばいいんだしさ。悲観はしてないよ。

--まぁそうですね。それが普通なんですけどね。

otuki:そうだよね。俺達みたいなバンドの場合は後は継続していく事しかないんだよ。やっぱりそれで作品を常に作っていくしかないんだよね。それは今回のレーベルも含めてだよ。

--逸れるついでなんですけど、1STが出て、2NDを出した流れって今考えても凄い事だったと思うんですよ。当時2NDで離れた人って絶対いると思うんだけど、これだけ時間が経つとその離れた人も今なら分かるんじゃないかなと思うんですが...。

otuki:それはどうだろう、自分では分かんないよ。でもそうであって欲しい。今だから言うけど、あの2NDを当時出した事については、絶対に凄かったと思うよ。だって今でこそWAVYだとかいう形容してるバンドなんていっぱいいるけど、あの時いたか?っていうといないでしょ?別にそれがどうとか関係ないけれども、事実いなかったじゃない?仮にいたのかもしれないけれど、俺達は音源にリリースをしたんだよ。形にしたんだよ。それは言いたいかな。

--リスキーだとか正直思いませんでした?

otuki:リスクを怖がって、自分達のバンドのイメージを限定する事程バカらしい事はないよ。だから自分達にはリスキーだとかいう感覚は一切ない。イメージにないからこういう音は出さないとか下らないよ。何も広がらない。

--じゃあ、よりパーソナルなものを作りたい...まぁソロとか、別名義での作品って全く頭にないですか?

otuki:それはまた若干別でさ、欲求はあるんだよね(笑)。でもそれは曲の問題ではないんだよね。今後あるかどうかは別だけれども、もっとたどたどしいベースが欲しいとか、軽い音のスネアが欲しい場合は今は無理でしょ(笑)?その場合は違った形になるんじゃないかな?今ちょっと考えてるのは、DEIRAの叩いたスネアの音を全部サンプリングして作っていくとかね(笑)。

--(笑)今回これだけ作りこんだ作品に仕上がったわけですが、ライブという点からみると今後の変化はどうなっていくんでしょう?

otuki:そうなんだよね。今回作った原則というのをライブにおいても上手くサウンド面で還元できないかなといつも思ってるんだよね。発想としてライブのサウンドをもっと作り物っぽくできないかなって。そうすれば、作品との差が少しでも縮まるよね。うまくライブで還元できれば、その逆にライブでとった方法を今度はレコーディングでも活かせるでしょ?だから方向としてはライブと音源は別というよりも、両方で相乗効果が出せる方法を見つけるのが理想。

--それは今後のバンド自体にも影響する訳でしょうし...。

otuki:そうだね。ただ、これだけ長くやってるからさ、ある部分似てきてしまう事は絶対的に避けられないと思うんだよ。これから先はもっと自由な発想と考えてはいたいよね。それは例えば外部の人が切り取ったREGISTRATORSのサウンドがどうなるかも楽しみだよね。今回は全て自分でやった訳だけど、絶対そうである必要はないよね。今は巡り合ってないだけで、絶対いるハズなんだよ。今回、こうやって作品を作る原則を作った事によって、様々な方向で太いパイプを作っていきたい。各方面のスペシャルなスタッフがそれぞれ同じベクトルに向かっていくのって凄く強力でしょ?だから、俺達は全然閉鎖的ではなくてむしろオープンだと思うよ。

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