REGISTRATORS INTERVIEW
"disk union free paper EXTRA issue 31"

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聴かずしてこのアルバムの深みと凄さを絶対に解らん。他人からの話や,メディアの文字情報(当然,本誌も含む)だけで聴いた気になったりしては,勿体ない程の凄いクオリティの作品。その3RDアルバムを引っさげて彼等はまだ誰も観た事のない領域に足を踏み入れた。
大槻氏とのインタビュー

----アルバムをリリースしようって何時頃から考えてたんですか?

大槻/Vo&G:2NDを出してすぐの時にバンドが続いてればいつかはあるなとは思ってたんだけれど,曲がなかなか出来なかったんだよね。まぁ出来たらやろうかなって感じで。

----曲は溜めて?

大槻:うーん...。なかにはキュウキュウのもあるんだけど(笑)。

----ゆっくりと構えてたとこにいいタイミングでリリースの話がきたと。

大槻:まぁ,そんな感じですかね。

----今回はLUSTRUMからのリリースという事もあって,今までと録音環境自体に変化があった訳ですよね?

大槻:そうですね。まぁでも,機材面の充実と,関わってくる人達が単純に多くなるくらいですかね。特に今までと比べて,どっちがいいとかは無いんだよね。2トラックとか4トラックのMTRレコーディングからの振幅が大きい方が面白いと思うんですよ。良い悪いじゃなくてね。だから,これからも色んな事を自由にやれる場所が欲しいし,時間もお金もかけられる方がいいしね。例えば優れたシュチュエーションの中にあっても,チャチな機材を使って出したい音があれば,出したいしね。

----抽象的な言い方で恐縮ですけど,一般的に聴きやすい音かなぁって...。

大槻:うん。それは絶対そうだと思うよね。でも良く聴くと,聴き難い部分もあるんだと思うけど(笑)。

----(笑)。でも拒絶感みたいのは感じないですよね。

大槻:そうそう。それはいい事だと思うんだよね。勿論2NDの時にも,聴きやすくという事は多少意識してたんだけど,それでもまだゴツゴツした感じは残ってたんだよね。それが今回は状況も変わって,出したかったベーシックな部分はナチュラルにというのは出来たかなという気はしますね。

----昔の曲の再録も入ってますが,やっぱりその環境の中での使える振幅の大きい中で,演ってみたかった曲を入れたんですか?

大槻:まぁそれもありますけど,特にコンセプト的なものは無くって...“SET ME FREE”に関しては,5〜6年くらい封印してたんだけど,去年くらいからライブでも演る様になったんだよね。演ってて思うのは,随分昔の曲なのに古さも感じないからね。単純に録り直してみようかっていう...。

----いや,つくづく,名曲だなぁと(笑)。

大槻:(笑)そう? あとさっき思ったんだけど,俺達の最初の音源ってSPLIT CDだったんだよね。でその後SNUFFY SMILEから5曲入りのシングルを出して...。今回はBEAT CRUSADERSとSPLIT CDを出してその後のコレがアルバムなんだけど,書き下ろしはやっぱり5曲なんだよね。勿論環境や,状況は違ってるけど,奇妙な偶然というか,グルっと周って一周した感じもするんだよね。そしてどっちにも“SET ME FREE”が入ってるんだよね。

----何かを暗示してるかの様に...。

大槻:...俺達,ガンガンいくゼって感じなんじゃない(笑)。追いつき追い越せで(笑)。

----(爆笑!) 今回の作品のプロデュースをBUZZCOCKSに頼みたかったという話をチラッときいたんですけど,昔から変わらずBUZZCOCKSをフェイバリットに挙げてるじゃないですか? それって現役で演ってるところがデカいんですかね?

大槻:まさにそう。“MODERN”ってアルバムも最高にカッコいいし。個人的にトニー・バウワと電話で話しもしたんだけど,解ってるんだよね。PUNKが一番好きなんだけど,今演るにはMODだったりとかさ。色んな事が解ってるから,2人で話してて凄い盛り上がったりして。やっぱり今まだ続けてるから解るんだと思うんだよね。

----一連の再結成バンドと比較すると...。

大槻:(笑)うん。70年代のバンドは大好きだけど,当時の音とかが好きな訳で,今再結成して当時の事を演ってるバンドと比べるとBUZZCOCKSは群を抜いて凄いと思う。

----僕,個人の感覚なんですけど,REGISTRATORSってアメリカのニオイが殆どしないなぁって感じるですよ。

大槻:えっ! そうかなぁ...。

----比べるのも何ですけど,FIRESTATERは逆にアメリカっぽい気がするんですよ。

大槻:あぁ...うん。俺個人ではアメリカのバンドも凄く好きなんだけど,確かにイギリスのバンドに影響を受けたアメリカのバンドに惹かれるかもね。NORMALSとか。後は80年代のダメな部分ってあるじゃない? 俺がそのダメな部分の真っ只中にいたんだよね,中学生の頃に(笑)。その部分が入ってるからアメリカっぽさを感じないのかもしれないけどね...どうなんだろう。別に俺達イングランドって感じでもないんだけど(笑)。

----勿論そうなんですけど...アメリカンR&Rみたいに幅の広がりじゃなくって,範疇を狭めて,その中で何が出来るのかっていうストイックさを感じるんですよ。

大槻:いや,それは無いよ。むしろバンド内でやってはいけない事みたいな規制はもっと無くしていきたいくらいに思ってるんだよね。今回のアルバムだってステレオタイプのPUNK ROCKでは無いし,今までには無いものだって演ってると思うんだよね。これから先はそういうのも新曲として普通に演りたいから,規制は無くしていきたい。でも,何でもありっていう訳じゃなくってね。

----やはり聴いていくとPUNKという言葉以外にしっくりくるものがないバンドだなと...。ROCKとかR&Rのイメージが持つ音ではないんですが...。

大槻:確かにROCKって感じではないよね。でも,今回のはPUNKとかNEW WAVEとかPOWER POPっていうのはキーワードではないんですよね。単純に歌...というかいいメロディがあってバックはベーシックな部分はナチュラルにという感じだったんで。各メンバーもフレーズをそれぞれ考えてたから,当て嵌めていった様な感じかな...。後,俺が思うのはSFじゃない未来感覚が欲しかったんだよね。今の時代の最先端ではないんだけど,先の事を意識しながら作ると,多少の硬質感は出るんじゃないかな。

----その未来感覚でいうとラストの曲のタイトルが気になるんですが...(笑)。

大槻:(笑)。みんな言うんだよね。バンド内でもどうなの?っていうくらいに(笑)。これに関して言えば変でカッコ悪いタイトルでもいいかなって(笑)。今はレコーディングにおいてもアートワークにおいてもコンピュータと関わらざるを得ない訳ですよね。でも,そこだけに流れていくのもツマンないしね。コンピュータ,コンピュータって言ってるヤツらを馬鹿にしてやれくらいの感じもあるんだよね(笑)。

----でも打ち込みで演っても成り立つ楽曲じゃないですか。

大槻:そう,そう。バンドで演った場合の,俺なりのそういう音楽なのかな。打ち込みか...なんか楽しそうだね(笑)。独りだったら演ってみたいね(笑)。

----(笑)。これはライブでも演る曲ですか?

大槻:一回演ったけど,音源出た後は...どうしようかねぇ(笑)。コレ再現無理だよね。どう考えても。

----でもライブ用にアレンジ直しても...。

大槻:そう。つまんなくなりそうだから。個人的にはスタジオ盤はスタジオ盤としてあってもいいと思うんだよね。大体,俺達は曲がいっぱいあり過ぎて,ライブでやってない曲も沢山あるから,そっちもそろそろ総ざらいしなくちゃいけないし。新たな曲も演りたいし。

----さっきも言われてましたけど,新曲に関しては良いメロディが凄く引き立つというか...展開が全く読めない凄いメロディだと思うんですよ。このCメロに辿り着くのにこのAメロなのか!という。それを練る作業は,言葉で言うよりも凄く大変だろうなと...。

大槻:そうなんだよね。大変だった(笑)。でもそう言ってもらえると嬉しいよね。やっぱりこのコードにこのメロディとか,展開の読めるメロディとかだけは絶対演りたくないんだよね。しかも,継ぎ足しみたいに,ガチャガチャしたものじゃなく,流麗に流れてなくちゃいけないんだよね。絶対に無いもの...うん,例えば“IMAGINATION WORLD”のAメロはあのコードとリフであのメロディは在り得ないんだよね。それを作っていく作業はやっぱり,大変ですよ。身悶えしながら作ってるからね(笑)。

----夜作るんですか(笑)?

大槻:(笑)そう,夜だねやっぱり。胃が痛くなりながら,やってますよ。最近はポンポン出来る事も少なくなったしねぇ...。大変なんですよ(笑)。

----でも,その苦しみがあってこの,奇跡的な楽曲になっていく訳ですから...。

大槻:うん。今回の曲で言うと“STILL BORED”って曲があるんだけど,派手な曲ではないんだけど,この曲の作曲技術は自分でも良いかなと...今後もそういう意味での満足度は得ていきたいんだよね。

----結果良い,綺麗なメロディになってる訳ですけど,それイコールPOWER POPなのかっていうとREGISTARTORSに関しては違うんではないかなという気がしますよね。

大槻:そうなんだよね。POWER POPってそもそも何んなの?っていうのもあるけどね。

----今の日本の音楽シーンとかって興味あります?

大槻:いやー,無いんだよね。でも5〜6年前では考えられない様なバンドがオーバーグランドに上がってきてるから状況はそんなに悪くはないんじゃないかな...。その中で俺達は俺達のやり方があるしね。もっと色んな人達が引っ掻き回してくれればいいと思うよ。

----でも現実としてその中のバンドとして括られてしまう事についてのジレンマとかあります?

大槻:いや,そこは仕方が無い部分なんで別にないですよ。ただ,もう70'S PUNKみたいな括りはもういいかなと...。それっぽい格好して,音出して,アートワークっていうのは全然構わないし,いいと思うんだけど,俺はちょっと違うんだよね。さっきも言ったけど,70年代のものは好きだけど,音楽的に高度な事を彼等がやってた部分を自分でもフォローしていきたいという気持ちが大きいから,イメージでの70'S PUNKっていうのはもう,いいかなって思うよね。

----そういう人達が求めている部分って当然解ってますよね?

大槻:そうだけど,求められてる事だけを演るんじゃ,それは芸能だよね。リリースする度,変わったとか言われるけど,ワザと以外で変化のないバンドなんておかしいじゃない?

----もう実質REGISTRATORSって長いバンドですよね?

大槻:長いですね。

----そろそろ,バーンと出ていってもいいんじゃないですか(笑)?

大槻:(笑)。バーンとね...いきたいですね。TVKに出たいですね(笑)。

----(笑)。TVKって。ちっちゃくないですか(笑)?

大槻:(笑)。小さい? じゃあ,あれだ。姪にオモチャ買ってあげられるくらいまでかな(笑)。

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